実家のこれから編集部 公開 更新

相続した実家の3,000万円控除|売る前に残す書類と申告までの流れ

「売却代金から3,000万円が戻る」と誤解しやすい特例です。実際には、一定の要件を満たした相続空き家について、売却益である譲渡所得から最高3,000万円を差し引きます。

売却後では集めにくい資料があります。電気・ガスの停止記録や空き家だったことが分かる資料を、片付けや解体の前に残すところから始めます。

この記事は約5分で読めます

相続した古い実家、売買書類、申告用のファイルを一緒に示した図
1
売却代金から取得費と売却費用を引き、残った譲渡所得から特別控除を差し引く計算を表した図

1. 売却代金ではなく、譲渡所得から特別控除を差し引く

税金を考える前に、売却代金と譲渡所得の違いを押さえてください。譲渡所得の基本式は、売却代金 − 取得費 − 譲渡費用 − 特別控除です。特例の対象になれば、この最後の特別控除として最高3,000万円を使えます(国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」)。

項目確認する資料
売却代金2,500万円売買契約書、精算書
取得費(土地+減価償却後の建物)1,000万円親の購入時の契約書、建築代金、購入手数料、建物の減価償却計算
譲渡費用200万円仲介手数料、測量・解体などの領収書
控除前の譲渡所得1,300万円上記3項目から計算

この例で特例の要件を満たせば、1,300万円の譲渡所得から控除します。控除できるのは利益額までです。超過分の現金還付や、給与所得からの差し引きには使いません。

相続した土地は、原則として親が購入したときの代金や手数料を引き継ぎます。建物は、引き継いだ取得価額から親の所有期間に応じた減価償却費相当額を差し引きます。表の1,000万円は、土地と減価償却後の建物を合計した仮の金額です。相続時の評価額や相続日の時価へ置き換える例ではありません(国税庁「建物の取得費の計算」)。

親の取得費が分からない場合は売却代金の5%を概算取得費にできる一方、実額より小さくなれば譲渡所得が大きくなります(国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」)。

古い売買契約書が見つからなくても、すぐに取得費を5%で確定する必要はありません。通帳、住宅ローンの記録、建築会社の資料、登記関係書類など、購入額をたどれる資料があれば、税務署または税理士へ持参できます。

資料は「親の購入時」「相続時」「今回の売却時」の3つに分けて保管。売却代金だけでは税額を判断できません。
2
古い戸建て、単身居住、空き家期間、売却期限を一つずつ確認する図

2. 建築時期・親の居住・相続後の利用・売却期限を確認する

制度名に「空き家」とありますが、対象は一定の戸建てに限られます。まず、家屋、親の居住状況、相続後の使い方、売却条件を同じ表へ入れます。

確認すること主な要件手掛かりになる資料
建築時期1981年5月31日以前に建築登記事項証明書、閉鎖事項証明書
建物の種類区分所有建物ではない登記事項証明書
親の居住原則、相続直前に親が一人で居住住民票、戸籍の附票
相続後の利用事業・賃貸・居住に使っていない電気・ガスの停止記録、広告、写真
売却期限相続開始から3年を経過する年の12月31日まで死亡日、売買契約・引き渡し日
売却条件代金1億円以下、親子・夫婦など特別関係者への売却ではない売買契約書

対象の家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上で、2024年1月1日以後に売却する場合は、1人あたりの控除上限が2,000万円になります。

制度そのものの適用期限は2027年12月31日です。相続ごとの3年期限と制度の終了日の両方が、売却時期を決める基準になります(国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。

親が老人ホームなどへ入所していた場合も、要介護認定等を受けていたこと、家財を置くなど一定の使用を続けていたこと、他人へ貸していないことなどの要件を満たせば対象になる場合があります。親族宅や一般の賃貸住宅へ転居した場合とは扱いが異なります。

相続後に兄弟の一人が住んだ、短期間でも賃貸した、事務所や倉庫として事業利用した場合は、空き家要件に関わります。判断に迷う利用歴は隠さず、期間と使い方を税務署へ伝えます。

市区町村の確認書は、税務上の適用まで確定する書類ではありません。最終判断は税務署が行います。確認書の申請と税務相談を別の手続きとして予定に入れます。

日付メモ:親が住まなくなった日、施設入所日、死亡日、相続後に家を使った期間、売買契約日、引き渡し予定日。
3
公共料金の停止記録、郵便物、施設書類、空き家の写真をファイルへ残す図

3. 売却前に空き家だった証拠を残す

実家の片付けでは、古い請求書や郵便物を不要品として捨てがちです。しかし、相続後に誰も住まず、貸していなかったことを示す資料として役立つ場合があります。片付け前に税務用の箱を一つ作ります。

  • 公共料金電気・ガス・水道の閉栓日、使用停止日、最終請求書
  • 郵便・住所親宛ての郵便物、住民票の除票、戸籍の附票
  • 施設入所要介護認定、施設の契約書、入所日が分かる書類
  • 空き家の状態各部屋、家財、外観、解体前後を日付入りで撮影した写真
  • 売却活動現況が空き家と分かる不動産広告、媒介契約書

必要書類は、実家の所在地を管轄する市区町村と売り方によって変わります。水道の使用停止証明を発行せず、同意書による照会で確認する自治体もあります。全国共通だと思い込まず、所在地の自治体へ「被相続人居住用家屋等確認書の申請に必要な書類」を尋ねます。

親が施設へ入っていた場合は、施設入所前の家の使い方も確認されます。家財を保管していたことが分かる写真、郵便物、公共料金の記録を残し、施設入所後に他の人が住んだり貸したりしていないことを説明できるようにします。

解体する場合は、家屋全体、家屋番号が分かる資料、工事契約書、請求書、解体前後の写真、閉鎖事項証明書などをまとめます。売却や解体が終わってから同じ写真を撮り直すことはできません。

国土交通省は、耐震改修後に売る場合、解体後に土地を売る場合、売却後に買主が耐震改修・解体する場合で申請様式を分けています。自分の売り方に対応する様式は、売却前に確認しておくと資料の不足を防げます(国土交通省「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」)。

捨てないもの:公共料金の最終記録、親宛て郵便、施設書類、空き家の写真、売却広告、解体工事の契約書と領収書。
4
古家の耐震改修、売却前解体、売却後解体の三つの進め方を分岐で示した図

4. 耐震改修・解体の時期を契約前に決める

対象になりやすい1981年5月31日以前の家は、現在の耐震基準を満たさないことがあります。特例を使うには、耐震基準を満たした家屋として売る、家屋を解体して土地を売る、または一定期限までに買主が耐震改修・解体する方法があります。

売り方契約前に確認すること残す資料
耐震改修後に売却工事費、売却価格、証明書を出せる時期耐震基準適合証明書等
解体後に土地を売却解体費、固定資産税、売却までの管理工事契約書、閉鎖事項証明書、前後写真
売却後に買主が対応翌年2月15日までの完了、買主の協力、契約特約特約、完了を証する書類

2024年1月1日以後の売却では、売却した年の翌年2月15日までに買主が耐震改修または解体を終えた場合も対象になり得ます。ただし、期限内の完了と証明には買主の協力が必要です。口約束ではなく、特約の文言と完了を確認する方法を不動産会社へ相談してください。

控除だけを理由に先に解体すると、古家付きで買いたい人を逃したり、解体費と更地の固定資産税負担が先に生じたりします。逆に、買主対応へ任せると、期限までに工事が終わらないリスクがあります。

査定時は、古家付き、解体後、買主による工事の三案について、査定額、解体費、工事期限、特例に必要な証明を同じ順番で尋ねてください。売り方の違いは3つの売り方の比較、解体費は解体見積書の6項目で確認できます。

不動産会社には「3,000万円控除を検討している」と査定時点で伝えてください。耐震、解体、引き渡し、買主の工事期限まで含む提案があれば、税務署や税理士へ確認したうえで契約案を比べられます。

持ち家売却の申込フォームでは、表示された不動産会社から査定を頼む会社を最大5社まで選べます。選んだ会社へ物件情報と連絡先が共有され、各社からメールまたは電話で連絡があります。連絡しやすい時間やメール希望を書けますが、希望どおりになるとは限りません。

利用料はかからず、査定後に売却を依頼する義務もありません。家族の売却意思が固まり、複数社との連絡に対応でき、申し込み後10日以内に日程調整、30日以内に訪問査定を受けられる段階で利用してください(持ち家売却公式)。

PR

古家付き・解体後の査定条件を比べる

持ち家売却では、実家に対応できる不動産会社へ訪問査定を依頼できます。建築時期、空き家期間、解体は未定であることを各社へ同じように伝えると、古家付きと解体後の条件を比べやすくなります。

査定時に伝えること:建築時期、相続日、空き家になった日、耐震状況、解体は未契約、特例を検討中、売却期限。
5
市区町村から確認書を受け取り、売買書類と一緒に税務署へ提出する流れを示した図

5. 市区町村の確認書を取り、確定申告する

売却しただけでは特例は適用されません。実家の所在地を管轄する市区町村へ「被相続人居住用家屋等確認書」を申請し、その確認書と必要資料を添えて確定申告します。

確認書の申請先は、自分の住所地ではなく、売った実家の所在地です。自治体によって予約方法、郵送可否、標準処理期間が異なります。売却後すぐに自治体の案内を確認し、確定申告直前まで待ちません。

手続き主な提出先主な書類
確認書の申請実家所在地の市区町村申請書、住民票等、空き家だった資料、売買・解体資料
確定申告売主の住所地を管轄する税務署譲渡所得の内訳書、確認書、登記・売買・耐震または解体資料

家屋と敷地を売ったのか、解体後の土地を売ったのか、売却後に買主が工事したのかで添付書類が変わります。耐震基準適合証明書、取壊しを証する登記事項証明書、売買契約書など、自分の区分に必要な書類を国税庁の一覧と照合します。

相続税を納めた人は、「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」とどちらを使うか検討する場面があります。相続税額、取得費、売却費用、控除前の譲渡所得を税理士へ伝えると、両制度の選択関係を比べてもらえます。

共有で相続した場合は、売却代金や費用、特例の適用も持分ごとです。相続人の人数によって控除上限が異なるため、代表者一人の申告だけで家族全員分が終わるとは考えないでください。

確認書、売買契約書、費用の領収書、親の取得資料は、一つの申告ファイルへまとめておくと安心です。紙の原本の保管者と、共有者へ渡したPDFも記録に残しておきます。

売却全体の手順は名義確認から引き渡し・申告までの流れ、仲介手数料や解体費を含む手残りは実家を売る費用の7項目で確認できます。

申告ファイル:確認書、譲渡所得の内訳書、登記事項証明書、売買契約書、親の取得資料、仲介・測量・解体等の領収書。

参考情報

制度や税務は改正されることがあります。個別判断は法務局、税務署、司法書士、税理士、不動産会社へ確認してください。