親が施設に入ったら実家はどうする?空き家になる前にやるべきこと

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空き家になりそうな実家の鍵と連絡先を確認する線画イラスト

はじめに

親が介護施設や老人ホームに入ると、実家はその日から「誰も住まない家」になります。最初は「また戻るかもしれない」「様子を見よう」と考えがちです。でも、そのまま半年、1年、3年と過ぎていく実家は、全国に無数にあります。

空き家になった実家を持ち続けると、固定資産税・火災保険・庭木の管理・雨漏りの修繕など、目に見える出費がじわじわと積み重なります。親の施設費用と実家の維持費が同時にかかると、子世代の負担は想像以上に重くなります。

「親が施設に入ったとき」が、実家問題を考えるベストなタイミングです。空き家になってから慌てるのではなく、今のうちにやるべきことを整理しておきましょう。この記事では、その手順を5つのステップに分けて解説します。

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空き家になりそうな実家の外まわりを確認する線画イラスト

1. 親が施設に入ったら、実家は「空き家予備軍」になる

親が施設に入ったからといって、すぐに実家が不要になるわけではありません。体調が回復して戻る可能性もありますし、「家は残しておきたい」という本人の気持ちもあるでしょう。入居直後に売却を急ぐ必要はありません。

ただし、「まだ決めなくていい」と「何もしなくていい」は、まったく別の話です。人が住まなくなった家は、思っているより早く傷み始めます。閉め切られた室内には湿気がこもり、使わない水道管は劣化し、手入れされない庭木や雑草は近隣トラブルの原因になります。郵便物がたまれば、防犯面でも不安が生じます。

管理が行き届かない空き家は、行政から指導を受けることもあります。法律の改正により、危険な状態になりそうな空き家も指導の対象に含まれるようになり、指導を受けると固定資産税が上がるケースがあります。「ほうっておけばいい」は、お金の面でも通用しません。

親が施設に入った実家は、「思い出の家」であると同時に、「管理が必要な不動産」です。感情だけで放置していると、あとからお金と手間が重くのしかかります。早めに動くことが、結果的に家族全員の負担を減らします。

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家族で実家の方針を話す線画イラスト

2. 最初に決めるべきは、片付けではなく「家の方針」

実家整理と聞くと、まず家財の片付けを思い浮かべる人が多いです。でも、最初にやるべきことは「物を捨てること」ではありません。「実家をどうするか」という方針を決めることです。方針なしに片付けを始めると、手間だけかかって何も前に進まない、という状況になりがちです。

方針は大きく4つです。①親が戻る可能性があるなら「このまま維持する」、②施設費用に充てたいなら「売る」、③家の状態や立地がよければ「貸す」、④子どもや親族が使うなら「家族で活用する」。どれにも決められない場合は、「いつまで保留するか」を決めます

保留する場合の期限は、半年から1年が現実的です。「次の介護認定のタイミングまで」「施設生活が落ち着くまで」「医師から帰宅の見込みを聞くまで」など、判断する時期をあらかじめ決めておくと、ずるずると先延ばしになりません。

もうひとつ、必ず確認しておきたいのが親本人の意思です。「家を売ってもいいか」「貸してもいいか」「家財を処分していいか」「誰に判断を任せたいか」──これらは、親の判断能力があるうちに聞いておく必要があります。実家は親の財産です。子どもが勝手に売ったり、貸したり、取り壊したりすることは法律上できません。後回しにすると、本人に確認できなくなるリスクがあります。

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実家の書類と郵便物を確認する線画イラスト

3. 空き家になる前にやる実家整理

方針がまだ決まっていなくても、今すぐやっておくべき整理があります。最初にやるのは重要書類の確認です。権利証(または登記識別情報)、固定資産税の納税通知書、火災保険証券、通帳、印鑑、年金・介護・医療関係の書類を探して、一箇所にまとめておきます。これらが見つからないと、売却・相続・保険の手続きで大きく手間取ります。

次に、家の中にある家財を3種類に分けます。「親が施設に持っていくもの」「家族が引き取るもの」「処分するもの」の3つです。このとき、写真・アルバム・位牌・貴金属・現金・重要な契約書などは、一人で判断して捨てないようにしましょう。あとで「勝手に捨てた」と親族間のトラブルになるケースが少なくありません。

ライフラインの整理も忘れずに。電気・水道・ガス・電話・新聞・定期購入品などを確認し、止めるもの・最低限残すものを分けます。空き家として管理を続けるなら、「誰が、何ヶ月おきに換気・通水・郵便物の確認・庭木の手入れをするか」まで決めておくと、管理が続きます。

最後に、近所への一言が大切です。「親が施設に入り、しばらく空き家になります。何かあれば連絡ください」と伝えておくだけで、トラブルの早期発見につながります。遠方に住んでいる場合はなおさら、近所の方の協力が欠かせません。

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実家を売る・貸す・残す選択肢を考える線画イラスト

4. 売る・貸す・残す、判断の基準

実家をどうするか迷ったら、感情ではなく数字で考えます。まず、年間でいくらかかっているかを計算してみましょう。固定資産税・火災保険・電気・水道・庭木管理・修繕費・訪問のための交通費を合計します。「残したい」ではなく「残せるか」が見えてきます。

売ることを検討するなら、早めに不動産会社に査定を依頼しましょう。家財が残っていても、築年数が古くても、まずは価格の目安を知ることが大切です。高く売れそうか、解体が必要か、土地として売る方がよいか──これらは不動産のプロでないと判断できません。1社だけでなく、複数社に査定を依頼するのが基本です。

貸すことを考えるなら、家の状態を先に確認します。水回りが古い・耐震性に不安がある家は、そのまま貸しても修繕費や入居者対応で苦労することが多いです。家賃収入だけを見るのではなく、リフォーム費・管理費・空室リスクも含めて採算を考える必要があります。

残す選択をするなら、「誰が管理費を払うか」「誰が草刈りをするか」「将来的に誰が相続するか」を家族で決めておきます。実家を残すこと自体は悪いことではありません。問題なのは、管理者も費用の負担者も決めないまま兄弟姉妹でなんとなく共有してしまうことです。曖昧なまま放置すると、10年後に大きな問題になって出てきます。

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相続後の手続きを確認する線画イラスト

5. 相続後に慌てないための準備

親が亡くなったあと、実家の問題は一気に「相続の問題」になります。2024年4月から、不動産の相続登記は義務になっています。相続を知った日から3年以内に登記しないと、罰則の対象になる可能性があります。手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。先延ばしにせず、早めに動くことをおすすめします。

相続後に実家を売る場合、一定の条件を満たすと税金が大幅に抑えられる制度があります(譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例)。親が老人ホームに入っていた場合でも、条件次第でこの制度が使えることがあります。ただし期限や建物の条件があるため、売却を考えているなら相続後なるべく早く、税理士か不動産会社に相談しましょう。

注意しておきたいのは、親の判断能力が落ちてからでは、実家を動かしにくくなるという点です。認知症などで本人が判断できなくなった後に実家を売ったり貸したりするには、家庭裁判所の許可が必要になるケースがあります。この手続きは時間がかかり、売りたいタイミングで売れないこともあります。

だからこそ、親が施設に入ったタイミングで動くことが重要です。親の意思を確認する、重要書類を集める、家財を分ける、維持費を計算する、方針と期限を決める──この5つができれば、実家は「困った空き家」ではなく「家族で判断できる家」になります。完璧に準備しなくていいので、まず一歩だけ踏み出してみてください。

参考情報

制度や税務は改正されることがあります。個別判断は自治体、法務局、税務署、司法書士、税理士、不動産会社などへ確認してください。