親の実家を管理不全空き家にしないために

管理不全空き家は、倒壊寸前の家だけを指す言葉ではありません。親の実家が空き家になり、庭木、外壁、雨漏り、郵便物、近隣からの連絡が気になる段階で、早めに知っておきたい制度です。

この記事では、税金・近隣トラブル・行政対応に触れながら、空き家になる前後に知っておきたい制度と相談先を示します。

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管理不全空き家の状態を早めに確認する線画イラスト
この記事が向いている人
  • 親の実家を相続した、または今後管理する可能性がある
  • 管理不全空き家、特定空家、固定資産税の軽減という言葉の意味を押さえておきたい
  • 自治体から連絡が来る前に、家族で何を確認すべきか知りたい

基準時点:2026年5月

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管理不全空き家の状態を早めに確認する線画イラスト

1. 管理不全空き家とは何か

親の実家が空き家になるのは、今や珍しいことではありません。総務省統計局の2023年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%でした。賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた、使い道が定まらない空き家も385万6千戸あります。(総務省統計局「2023年住宅・土地統計調査」)

管理不全空き家の対象になり得る外壁や雨漏り、庭木、窓、害虫などの確認ポイントを整理したイラスト

空家法上の「空家等」は、居住その他の使用が通常行われていない建物や工作物を指し、敷地や立木も含まれます。通常使用されていないかどうかは、出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況、所有者の利用実態などを総合して見られます。(国土交通省「空家等対策特別措置法関連情報」)

2023年改正で重要になった管理不全空家等は、まだ特定空家等ほど深刻ではないものの、放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家です。国土交通省も「特定空家の予備軍」と説明しています。(国土交通省「空家等対策特別措置法関連情報」)

注意したいのは、「すでに危険な家」だけが対象ではないことです。屋根や外壁の傷み、雨漏りの兆候、庭木の越境、壊れた窓や扉、動物や害虫の発生なども、放置すれば問題化する可能性があります。

親が実際に住み、生活の本拠として使っているなら通常は空家等ではないため、長期入院や施設入所、相続後の放置がある場合は、実際には使われていない状態と受け取られることがある点に注意が必要です。

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空き家放置で起きる近隣・劣化・税金のリスクを示す線画イラスト

2. 空き家放置で起きる3つのリスク

人が住まなくなると、換気や通水、郵便物、庭木、防犯の確認が止まり、外から「管理されていない家」に見えやすくなります。管理不全空家につながりやすい入口は、主に次の3つです。

建物の傷み

屋根・外壁、雨漏り、窓や扉の破損が進むと、周囲へ影響することがあります。

税金への影響

勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れる場合があります。

近隣・行政対応

枝の越境、ごみ、害虫、窓割れなどが苦情や自治体からの連絡につながります。

住宅用地特例では、小規模住宅用地の固定資産税の課税標準が6分の1になるとされています。ただし、勧告を受けると対象から外れる場合があります。「空き家なら税額全体が必ず6倍」ではないため、通知書を手元に、市区町村の固定資産税担当へ問い合わせてください。(国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る措置」)

空き家になった直後の鍵、郵便物、水道・電気、近隣連絡などは、親の実家が空き家になったら最初にやることで詳しく触れています。

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自治体から勧告を受けた場合の通知と住宅用地特例を確認する線画イラスト

3. 勧告を受けるとどうなるか

管理不全空家等では、まず市町村から所有者へ指導が行われることがあります。指導しても状態が改善せず、このままでは特定空家等になるおそれが高い場合、市町村は勧告できるとされています。(国土交通省「管理不全空家等・特定空家等ガイドライン」)

行政からの指導、所有者の対応、勧告、命令や代執行に進む流れを示したイラスト

指導では、対象の建物、現在の状態、放置した場合の悪影響、求める措置などが示されます。求められる措置は、屋根や外壁の補修、立木の伐採、侵入防止、排水・ごみ・害虫への対応など、特定空家等になることを防ぐための具体的な内容です。(国土交通省「管理不全空家等・特定空家等ガイドライン」)

指導を受けても改善が進まない場合、市町村から勧告を受けることがあります。勧告を受けると、住宅用地特例から外れる場合があり、税額への影響は市区町村の固定資産税担当が窓口になります。(国土交通省「管理不全空家等・特定空家等ガイドライン」)

さらに特定空家等に進み、命令に従わない場合などは、行政代執行や50万円以下の過料の対象になることがあります。(e-Gov法令検索「空家等対策特別措置法」)

行政から文書が届いたときは、通知日、回答期限、求められている措置、担当部署名が重要です。必要なら写真、見積書、作業予定日を添えて「いつ、何をするか」を伝えましょう。(国土交通省「管理不全空家等・特定空家等ガイドライン」)

ただ、通知を受け取った人が登記上の名義人ではない、兄弟姉妹の誰が窓口になるか決まっていない、相続人が多くて話が止まっている、といった場合は行政対応だけでは進みにくくなります。名義や相続人の確認に時間がかかるときは、法務局や司法書士に加えて、相続アシスト(PR)のような相続手続きの相談先も候補になります。

必要な措置を行って状態が改善すれば勧告や命令の撤回などが検討されることもあるため、放置せず担当部署へ早めに連絡しましょう。(国土交通省「管理不全空家等・特定空家等ガイドライン」)

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登記と売却の確認を同時に進める線画イラスト

4. 登記・売却を同時に進める

実家を相続した場合、相続登記も切り離せません。2024年4月1日から、相続で不動産を取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。2024年4月1日より前の相続も対象で、その場合の期限は原則として2027年3月31日です。(法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)

遺産分割がまとまらず、すぐ相続登記ができない場合は、相続人申告登記という制度もあります。これは相続登記そのものではなく、売却できる状態にする手続きでもありませんが、申請義務を簡易に履行するための制度です。(法務省「相続人申告登記について」)

売却を考えるなら、税制上の期限も意識しましょう。国税庁は、一定の要件を満たす相続空き家の売却で、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例を案内しています。要件には建築時期、居住状況、売却期限、売却代金などがあるため、税務署や市区町村に確認しましょう。(国税庁「相続空き家を売ったときの特例」)

登記が終わってから管理、管理が落ち着いてから売却と順番に待つと遅くなるため、名義・現地管理・出口は同じ時期に手を付けましょう。

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空き家になりそうな実家について早めに相談する線画イラスト

5. 空き家になりそうなら、まず相談

最初に相談すべき相手は、市区町村の空き家担当部署です。登記は法務局、固定資産税は市区町村の固定資産税担当、譲渡所得税は税務署が相談先になります。空き家の3,000万円特別控除を使う場合は、市区町村で確認書の手続きが必要になることもあります。

自治体によっては、空き家相談、専門家団体の紹介、空き家バンク、解体・改修補助制度を設けています。制度の有無は地域差があるため、まず実家のある市区町村へ問い合わせます。

親の実家を守ることは、必ずしも家を残すことではありません。放置せず、法的期限を守り、近隣に迷惑をかけず、使う・売る・壊す・管理するのどれかを決めることが、子世代にとって現実的な責任になります。

参考情報

制度や税務は改正されることがあります。個別判断は自治体、法務局、税務署、司法書士、税理士、不動産会社などへ確認してください。